【利尻・礼文2004 「あの日輝いていた仲間たちへ…」】

 もし一番贅沢な旅がしたいというならどこを選ぶだろうか。
 海外のリゾート、国内の温泉地、人それぞれだろう。だが、私が思いつく究極のリゾートは「利尻・礼文」である。礼文は花を求めて、利尻は山を求めて訪れる人が多い。だが、みんな目的を果たしたらそれでおしまいなのである。
 今一度立ち止まってじっくり島を堪能しよう。そこはどんな豪華なリゾートにも劣らない自分だけのリゾートがあるということを…

礼文島篇

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8月8日 桃岩荘: 午前5時(ただし桃時)

 桃岩荘名物の「愛とロマンの8時間コース」の朝は早い。桃岩荘時間で朝5時起床である。ちなみに桃岩荘では時差があるらしく、日本標準時より30分早く動いている。このあたりの演出が心憎い。だが、朝が早いことには変わりない。私もヘルパー(ユースホステルのスタッフ)に起こされ、8時間コースに出かける支度をする。

 それにしても天気がよくない。波も高いし、視界があまりよくない。本当に大丈夫なのだろうか。

【左】 朝出発前の桃岩荘から見た海。猫岩が霞んで見えることからかなり天気は悪い

スコトン岬: 定番の記念撮影

 ユースホステルからの送迎で「8時間コース」の出発点であるスコトン岬までマイクロバスで向かう。礼文島は東海岸しか道路が整備されておらず、西海岸は手付かずの自然が残ったトレッキングコースとなっている。そこを歩くのが「8時間コース」である。8時間コースの名前の由来はそのコースを歩くとおよそ8時間というところからついたといわれている。

 近年コースで危険箇所が出たため、迂回ルートを通っており本来の8時間では歩けないが、それでも魅力は未だ尽きない。

【右】 スコトン岬での定番の記念撮影。ここからスタート、後ろにはかすかにトド島が見える。

スコトン岬: こんな天気に誰がした

 私も過去数度と8時間コースを歩いてはいるが、今日ほど天気の悪い日は未だかつて見たことがない。この空、そして高い波。嫌な予感はしたものの、スタートしたのである。

 ちなみにスコトン岬は「日本最北限の地」と謳っているが、日本最北端の地である宗谷岬よりは南にあるため、このように名乗っている。だが、なだらかに通過してしまう宗谷岬に比べると、こちらのほうが「最果て」の気分はあると思う。とりあえずスコトン岬に経緯を表して、私たちは歩き出した。

【左】 スコトン岬の標識 奥に見えるのはトド島、ここも秘境だ。

 「日本最北限の地」スコトン岬を出発しておよそ20分、鮑古丹という集落に入る。実際に住んでいるか住んでいないのかわからない民家の軒先を分け入るように歩く。

 今日のメンバーは16人、最初から4時間コース(8時間コースの短縮版)を選んでいる人も含んでの人数だ。おおよそこの8月の前半は参加者が多いのがセオリーだが、天気も悪いことを含めて今日の参加者はぐっと少なめだ。それでもこのくらいの人数のほうがみんなの顔がわかって楽しく歩くことができる。出会ったメンバーに感謝。

 海岸沿いで霧が出てきた。上着に水滴がつくような霧にすこし悩まされる。

【右】 みんな打ち解けてきたのか和気藹々と歩き出す。先頭は今日のリーダーのD君。

 鮑古丹で海岸に出ると、ゴロタ岬までの約1kmほどの道がもっともアップダウンのきつい道となる。海抜ゼロからゴロタ岬の海抜約100mまで一気に登り、一気に下りてしまう。艱難辛苦を乗り越えて着いたと思ったら、ご覧のような天気。かすかに写真の左端に人の姿を確認できるほどの視界の悪さ、本来ならこの岬でスコトン岬からの海岸線の眺望を楽しむことができるのだが、これでは台無しである。

 霧がますます身体にまとわりつく。上着はまるで雨に降られたようにうっすらと濡れ、気温もさほど上がらない。みな防水、防寒の用意をして先を進む。

【左】 霧で何も見えないゴロタ岬。この先には海が広がっているはずなのだが…

 まずないとは思うが、この写真見てみると遭難寸前の登山者にしか見えない。霧で上着が重くなっているせいか身体も重くなかなかペースが上がらない。またゴロタ岬からの下りは足元が非常に悪く、ほぼ全員が一度は滑っている。斯く言う私もこけた。

 まだ先は長い。

【左】 ゴロタ岬を過ぎたあたりで一休みしたときのひとこま

鉄府: 穴あき貝を探して

 ここの海岸では直径5mmほどの小さな穴があいた貝殻が無数に落ちている。観光客用に地元の人がわざわざ開けているとは思えない、当たり前である。これはツメタガイという貝の一種が他の貝を食べるときに酸で溶かして穴を開けそこから中身を食べるという残骸がそうではないかといわれている。実際のところは定かではないそうだ。

 この日、波が高いだけでなく満ち潮だったらしく海岸線はかなり狭かった。

【右】 海岸線が狭いせいか「穴あき貝」もあまりとれなかった?

 どこの世界にも「いちびり(お調子者)」はいるもんである。

 なぜか海岸で靴脱いで海に入る男一人、全く絵にならない写真である。本人曰く「穴あき貝を洗いにいっていただけだ」とのこと。真偽の程は定かではない。

【左】 寒い中海に入るL氏。気温20度ぐらいだったような…

鉄府〜西上泊: 前半戦最大のヤマ場

 前半戦のヤマ場である鉄府から西上泊越えに向かう。先ほどのゴロタ岬ほどではないが、海抜ゼロから一気に登ってすぐに下りてしまう。足元がかなり悪く、皆慎重に歩き出す。

 天気は一向に回復せず、未だ波高し。

【右】 登っていく際にふと振り返ると荒々しい波にもまれた海岸線を見ることができた。

礼文の花たち

 断っておくが、私は花に関しては何も勉強していないのできれいな花があってもそれが何であるかわからない。たまーに「この花は○○だよ」と女の子にええとこ見せようとして知ったかぶりをする野郎を見かけるが、総じて近くを歩いている中年のおじさんorおばさん達に間違いを指摘されて恥をかいてしまうのが関の山である。

 えっ、えらい話がリアルやなぁって。この「知ったか男」が私かどうかはどうでもいいじゃないですか。とにかく花はきれいならそれでいい。名前はあるんだろうけど、名もなき草木に花にココロを寄せるのもまた一興である。

礼文の花たち(まじめに)

 礼文島の凄いところは、本州では2000m以上の高地でしか見ることのできない高山植物が海抜ゼロメートルでも見ることができるというところである。また、礼文固有の種もいくつかあり「レブンアツモリソウ」や「レブンウスユキソウ」など頭に礼文の名を冠する種から見ても礼文は「花の浮島」といわれる所以であろう。

 実際の花のシーズンは6月から7月にかけてだそうだ。私はまだこの時期に行ったことがない。一度は行ってみたいものだ。

西上泊: せっかくの景色も

 スタートから小さいながらも山を2つ越して着いたのが西上泊という集落である。礼文島西海岸では唯一といっていいほど東海岸からの道路が整備され、漁港や売店など人の気配を感じさせる集落である。

 この西上泊の集落の先に澄海岬(すかいみさき)という岬がある。「8時間コース」もここが前半戦最大の見所、「4時間コース」ならこの岬が当面の目標となる地点である。天気がよければ右の写真も岬の名前の如く澄んだスカイブルーの海が見ることができるのだが、今日は無理だった。残念。

【右】 天気が悪く海が曇ってしまった澄海岬。本当なら鮮やかな青色なのだが…

 リーダーD君が神妙な顔で私達に語りかけた。

 「今日はこの先のコースで波が高いところがあるので、ここで断念して4時間コースになります」

 私や昨日フェリーで一緒だったO氏も薄々「これは無理だろう」と思っていたが、案の定ここで8時間コース断念である。またこれも神のいたずらだと自分を納得させ、16人でもう少し歩くことになった。

【左】 ここで中止になったけど、なぜかみんないい笑顔してます

つづく