【利尻・礼文2004 「あの日輝いていた仲間たちへ…」】

 もし一番贅沢な旅がしたいというならどこを選ぶだろうか。
 海外のリゾート、国内の温泉地、人それぞれだろう。だが、私が思いつく究極のリゾートは「利尻・礼文」である。礼文は花を求めて、利尻は山を求めて訪れる人が多い。だが、みんな目的を果たしたらそれでおしまいなのである。
 今一度立ち止まってじっくり島を堪能しよう。そこはどんな豪華なリゾートにも劣らない自分だけのリゾートがあるということを…

礼文島篇

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8月9日 元地: 朝5時30分

 昨日あれだけ歩いたのにかかわらずまた朝早く起きて元地に来た。

 左の写真が「礼文三台奇岩」の「地蔵岩」である。どこが地蔵やねんというツッコミはあるだろうが、ちょうど中心の二つの岩がお地蔵様の手に似ているというが果たしてどうなのか、?ではある。

 この日の朝も天気があまりよくなく波も高かった。

【左】 礼文三大奇岩の「地蔵岩」現在は立ち入りが規制されているので元地から撮影

元地: 佐藤売店

 朝5時からあいている店だ。ここの名物はなんといっても「うに丼」であろう。礼文島の一般的な店に入ってうに丼を食べても3,000円は覚悟しておかないといけないが、ここでは少し小ぶりの「ミニうに丼」が1,000円で食べることができる。とりあえず安くそして少しだけうにの気分を味わいたいのならここで文句はないだろう。

 斯く言う私も昨日一緒に歩いた人たちと連れもってやってきたのである。

【右】 佐藤売店全景 朝5時開店にもかかわらずユースから来る人で連日賑わう

元地: 佐藤売店の「(ミニ)うに丼」

 朝5時半から大挙して押し寄せたのにかかわらず当たり前のように応対する店のおばちゃんの手際よさに感心しながら、うに丼を待つ。

 程なくしてきたうに丼は大変おいしかった。かろうじて「バフンウニ」だということだ。時期によって「ムラサキウニ」と「バフンウニ」のどちらかになるという。私達にしてみたらどっちでもいいような気がする。さすが礼文のうには内地のうにに比べて、というか比べるのも失礼なくらい濃厚な味わいで口の中でとろっと溶けだす。1,000円で十分価値のある一杯だった。

【左】 これが「ミニうに丼」(1,000円) しかし味はミニではない!

元地: もう一つの名物メニュー

 この佐藤売店、うにで有名なのだがもう一つ名物がある。それが右の写真の「トド」である。トド肉を食べさせてくれるというのだが、トド肉ってどんな味がするのだろうか?私も未だ食べたことがなくコメントのしようがない。

 ただ一ついえるのはこの「トド」を食べたらお店の壁に貼り付けられているポラロイド写真の一人となることができるということである。歴戦の勇者達の写真を見て、よし次こそ挑戦といいたいところだが今度来るのはいつのことやら…

【右】 立派なトドの剥製。もう一つの名物の存在を示してくれている

元地〜桃岩荘: 贅沢な散歩

 朝からうにを食べるという日常の生活ではまず考えられない生活、そして二日連続して早起きをするなど礼文には朝早く動くことでよいものがたくさんある。

 今日は海岸も波が高いがメノウ海岸で天然のメノウ石を探すも一興かもしれない。花より団子かはたまたその逆か、満足した私達は行き来た道を辿って桃岩荘に帰ることにした。

【左】 元地のメノウ浜、昼間は観光バスできた観光客でごったがえすとか

桃岩荘: 朝

 元地までの贅沢な散歩を終えると既にユースホステルも起床時間を過ぎていて朝の慌しい風景が飛び込んでくる。本来なら朝起床時間に脳天を直撃するようなメロディーで起こしてくれるのでどんな寝坊助だろうが一度で目が覚める。残念ながら、今回は聞いていないが…

 なぜか天気は急に回復しだしてきた。昨日のことが悔やまれる。

【左】 旭日旗がなびく礼文島西海岸(桃岩荘から撮影)

桃岩荘: 朝の玄関前見送り

 桃岩荘では行きは送迎が来るが、帰りは桃岩荘から香深フェリーターミナルまでの道を歩いていくということになっている(体調が悪いとか、天気が悪い日は除く)。そして朝1番8時45分発稚内行きフェリーに乗る人は朝玄関前でお見送りをしてもらえる。そしてみんな一斉に歩き出す。

 ここで礼文での時間を思い起こ泣き出しそうになる者もいるとか。そして歩き出すが、何度も何度も振り返っては「いってらっしゃい」「いってきます」と見送るほう見送られるほう双方が叫びあう。またこれも旅の味わいなのかも知れない。

【右】 朝の玄関前見送り

香深フェリーターミナル: 旅の別れは新たな出会いのはじまり

 歩いてきた人が感傷に耽っているころ、桃岩荘では朝の清掃をしている。それが終るといよいよお見送り部隊が出動ということになる。

 昨日一緒に歩いた人も殆どがこの便で礼文をあとにしてしまう。もちろん私もお見送りに行った。やっぱり歳の功かとてもおちついていたっしゃったTご夫妻、そして結婚間近のYさんと彼女さん、皆さんお世話になりました。

【左】 船が来るまでのひととき。名残は惜しい

香深フェリーターミナル: 変わらない光景

 毎朝決まって船が稚内からやってくる。その船に対して旗を振り歓迎する姿。桃岩荘のヘルパーが毎朝欠かさずフェリーターミナルでやっているひとこまである。

 青空に映える彼の姿は、今のご時勢の忘れかけていた旅情をよりもどしてくれる。

【右】 いつもと変わらぬ歓迎のシーン

稚内行出港: 別れは辛いけど

 8時45分、船は稚内に向けて出港した。

 桃岩荘のお見送りは大変激しい。昔の離島のお見送りのスタイルを残して、桃岩荘独自の世界を築いている。それが故にはまってしまう人と、恥ずかしいかどうかわからないが一歩引いてしまう人さまざまだろう。だけど、人と人との別れに素直になれなくてどうするのだろうか。1日でも一緒に歩いた仲間、その別れくらい自分のもてる力を精一杯出して送ってあげるのもいいことだと思う。日常の感動に疎くなった人は一度経験するといい。人と人との繋がりの濃さを改めて再認識するかもしれない。

【左】 後部デッキは桃岩荘の独壇場?

桃岩荘: 何もしない午前

 見送りが終ると、めいめい送迎車に便乗して桃岩荘に戻ったりそのほかの観光地に向かったりと「8時間コース」以外のことをして過ごすことになる。私はO氏父子と昼過ぎの便で利尻に渡る予定にしていたので午前中がすっぽりとあいた格好になる。

 最初ユースに戻るつもりだったが、送迎車の都合で少しフェリーターミナルを散策して戻ってきた。

【左】 やっと晴れてくれた。猫岩が心なしか嬉しそうにも見える?

桃岩荘: Ben&Joe Houseで過ごす贅沢な時間

 ユースホステルとしては前近代的な桃岩荘にはなぜか付属の喫茶店がある。その名も「Ben&Joe House」通称ベンジョである。女性ヘルパーが朝から夕方まで日替わりでママをやっていて喫茶のメニューはもちろんのことランチタイムにはママ特製のカレーライスが食べられるということで、昼間桃岩荘で何もしない人間が多く溜っている。

【右】 「Ben&Joe House」全景

 だいたい来ても2泊しかしない私はこの「Ben&Joe House」に立ち寄ることは本当に稀なのだが、折角できた時間だ午前中はここでゆっくりすることにしよう。

 早速喉が渇いていたので、特製の「カルチチ」を注文した。カルピスと牛乳を足して2で割ったような飲み物だったが、心地よい風が入ってくる店内で美味しくいただいた。

【左】 これがカルチチ(250円)。陶器の器がなんともいい味を出している

 そしてランチタイム、シーフードカレーである。結構魚介類が豊富に入っていてボリュームもあった。また辛さも程よく、一気に食べてしまった。これで680円なら文句はないだろう。

 何時間いたか定かではないけど本当にうだうだするには最高の場所である。桃岩荘も「8時間コース」だけじゃない。自分で時間をうまく使うことで美味しいものや、くつろぐ時間を作ることができる。改めて礼文島の時間の過ごし方を考えさせられた。

【右】 そしてランチタイムのメイン「シーフードカレー」(680円)

桃岩荘〜香深フェリーターミナル: 後ろ髪引かれる思いで

 13時45分発利尻島鴛泊行フェリーに乗るべく「Ben&Joe House」をあとにして朝出立した人と同じように歩き出す。ただ、玄関前見送りはなく静かなものである。感傷に浸るならこれくらいでいいか。

 昼前くらいから雲ひとつないいい天気になってきた礼文島はまるで昨日歩いた私達を嘲笑うかのように明るかった。「どうせまた来年来るんだろう、いい天気の礼文に逢いたければまたおいで」と語りかけてくるようであった。

 盛大とまでは行かないが3人を見送ってくれた人、感謝。余韻に浸りながら利尻行の人となった。

【左】 桃岩展望台への遊歩道分岐点にて

礼文島編 了 (利尻編に続く)