大阪「渡船」めぐりのいざない

演歌の世界だけかと思われるが、大阪市内には今でも8ヶ所の「渡船」が活躍し、地元の貴重な足として利用されている。その風景は街の中で何か見失ってしまったような昔懐かしい風景ばかりである。
しばし都会の喧騒を離れて全速力で轟音を撒き散らす船のエンジン音に身体を委ねてみませんか?

  1. 天保山渡船


  2. 甚兵衛渡船


  3. 千歳渡船


  4. 船町渡船


  5. 木津川渡船


  6. 千本松渡船


  7. 落合下渡船


  8. 落合上渡船


  9. (番外)安治川トンネル


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落合下渡船 (小林東[大正区]〜津守[西成区])

 大正区の平尾と西成区の津守を結ぶ短い渡船である。工場地帯で殆ど住宅らしいものが周りにないというか、ただ単に渡船めぐりをしている人間の行く手を阻むかのように見つかりにくい場所にある。

【左】 細い路地にふと現れる渡船乗場。 [2004年4月撮影]

 ちなみに津守側の乗場は千本松渡船の津守側から歩いてもいけない距離ではないが歩くと工場の中を歩き、轟音を立てて走 るトラックや周囲の工場から出るであろう粉塵にまみれて歩くため思った以上に辛い思いをする。ただ見つかったときの嬉しさはまるで砂場で砂金を探し当てた ようなささやかな喜びに浸ることができる。

【右】 落合下渡船で活躍する「みどり丸」 [2004年4月撮影]

 工場の合間にある渡船乗場を入っていくとぱっと木津川が広がる。

 NHKの朝の連続テレビドラマ「やんちゃくれ」で大阪の造船所を舞台として取り上げていたが、まさにこの界隈がその場所である。川岸には古くからある造船所や金属加工工場がひしめき、大阪のディープな一面を見ることができる。

【左】 渡船から見た木津川。遠くに千本松大橋が見える [2004年4月撮影]

 おそらく工場の通勤で使うであろう渡船で、昼間の利用なんてよほど酔狂な(私みたいな)人間しかいないと思ったが、それでも2台ほど自転車と一緒に川を渡った。

 渡船の係員に聞いてみた。「私一人でも運行するんですか」係の人はさも当たり前のように「そうですよ」。それもそうだ、酔狂な人間でも通行人には変わり ない。もう一つ質問してみた「じゃ誰もいなかったらどうするんですか」と。この質問も愚問のようだった「対岸に人がいるかもしれんから時間通り動かす」。 確かに当たり前の答えだ。

【右】 自転車といっしょに [2004年4月撮影]

 私はくだらない質問をした自分を恥じた。

 そして悟った、この人たちのおかげでこの渡船は多くの人の足となっていることを。

【左】 平尾側にある渡船の案内板。渡船場は手前の道路を横断したところにある。はっきりいって解かり辛い。[2004年4月撮影]